通過儀礼~おひとり様の介護離職~第9回 離職中の収入確保について

  2018/3/24
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政府が「働き方改革」を推進しています。残業時間削減、生産性向上等にフォーカスされがちですが、そこが目的ではないはずです。日本の雇用が硬直的なのは、昭和の労働観・雇用慣習と、製造業からサービス業への転換、テクノロジーの進歩、労働人口の減少などの時代の変化が単純に折り合わなくなっているからだと思います。個別の事情が複雑になっている現代、長時間働くことが美徳であるという、昭和のモーレツ社員信仰からの脱却が、真の働き方改革なのではないでしょうか。

「ストロング・タイ」と「ウィーク・タイ」

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通過儀礼~おひとり様の介護離職~第9回 離職中の収入確保について
「仕事しないで収入はどうしてたの?」


介護離職中によくあった質問です。結論から言いますと、“預金の取崩し”でした。


幸い、両親にはいくばくかのかの貯えがあり、両親の年金と併せて、何とか暮らしていけることはできました。会社勤めをしていれば発生していたであろう衣服の購入や、酒席等お付き合いの費用も不要で、旅行や外出なども難しかったため、必要最小限の出費で暮らしていました。


それでも、ちょくちょくお金を降ろしに行っていましたが、そこで残高を正視することができず、画面から目を逸らしてしまいます。今でもATMに行くと、その時のトラウマが蘇り、残高表示の位置に視線を落としたくはありません。お金が徐々になくなっていくのは、ある種の恐怖なのです。


ある日、コンビニでお金を降ろそうとすると、残高不足の表示が。「ついになくなった!」と衝撃が走りました。その後、必要になったら母親に相談していたのですが、40歳過ぎて親に無心するのは、なんとも情けなく、惨めな思いがしました。こんなところでも介護離職は当事者を追い詰めていきます。


そんなとき、かつて勤めていた会社の先輩から、「自叙伝を自費出版するから、原稿の校正を手伝ってくれない?」と依頼を受けました。すぐに「やります!」とお返事し、報酬を受け取ることができました。介護離職して実家に戻る際、いろいろな方にご挨拶していたので、それを覚えていてくれたそうです。


黙っていても収入は得られない、時間は膨大にある、何かしなければと発起した私は、かつての同僚に連絡を取り始めました。私は転職が多く、勤めた会社は10社近くになります。最低一社に一人は退職後も連絡をとっている方がいましたので。地方在住、在宅勤務、パソコンでできる仕事などの条件を定めて、当てはまりそうな仕事をしている方を中心に連絡をとりました。

SNS等で叫べば誰かしら知恵や解決策を教えてくれます

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通過儀礼~おひとり様の介護離職~第9回 離職中の収入確保について
その結果、ポツリポツリとお仕事をいただき、何とか食つなぐことができるようになりました。私を救ってくれたのは、これまでの同僚と緩く繋がっていた「ウィーク・タイ」でした。血縁、地域共同体、会社等、必然性の強い関係性の「ストロング・タイ」に比べ、「ウィーク・タイ」は切れそうで切れない緩やかなつながりです。何か困った場合、SNS等で叫べば誰かしら知恵や解決策を教えてくれます。「自分はずっと1社しか勤めてないよ!」と言われる方も、学生時代の友人、既に退職されたかつての同僚、同じ趣味の仲間、お仕事で知り合った方など、「ウィーク・タイ」で繋がる方は大勢いらっしゃるかと思います。


介護離職に限りませんが、リストラや自然災害、病気等、人生の困難にぶつかった時のために、独自のセーフティネットの構築の準備をしておくのもよいかもしれません。

真の働き方改革とは

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通過儀礼~おひとり様の介護離職~第9回 離職中の収入確保について
現在は個人で経営コンサルタントをしていますが、介護が終わって労働市場に戻ろうとすると、見えない壁にぶち当たります。


45歳以上はよほどのキャリアがないと求人は少ない、何年かのブランクがあるとその間を評価してもらえない、まだ母親が一人で残っており、また介護になるかもしれない等、企業側もリスクを回避するため、脛に傷持つ人間は採用担当者から忌避されてしまいます。


本人は働く意欲もあり、ある程度の能力もあるにも関わらず採用されない。明文化されていない暗黙の雇用慣習が採用を阻んでいたような気がしてなりませんでした。


幸い、私の場合はご縁があって認知症治療に力を入れているサプリメントメーカーに就職が決まりました。これまでの経験も役に立ち、まさに「捨てる神あれば拾う神あり」でした。しかしながら、残りの人生は自分で働き方を自由に設計できる仕事に就かなければと考え、経営コンサルタントになるべく半年で退社しました。


介護離職に限りませんが、例えば人生の途中で「大学へ行って学び直したい」「市議会議員に立候補して地域に貢献したい」など、現在と違ったレールを進みたいと思うことがあっても、わが国ではそのような行動は好まれません。最近ようやく「リカレント教育」が叫ばれていますが、 “敵前逃亡”“現実逃避”として、昭和のモーレツ社員から見たらとんでもない行為に見えるでしょう。事実、いったんレールを外れてしまった人は、もとのレールに戻ることは許されません。「一度逃げ出したくせに」と、現状に留まった(=我慢した)人からしたら、勝手な行動に見られてしまいます。


しかし、人生は一度きり。悔いの内容自分の生き方を選択することが、何故自分勝手なのでしょう。それどころか、妊娠・出産といった次の世代を育てるという営みさえ、わが国では育児・介護休業法等、お上が法律で支援しない限り、「この忙しい時に」と舌打ちをされてしまうようなお粗末な状況です。


モノが溢れ、食べ物にも不自由しないのに、なぜか“生きづらい”。その真因は、“自分と異なる価値観や文化を持った他者への許容度が極めて低い”ことにあると思います。


その本質を見極めないまま、“残業減らせ”“同一労働同一賃金”“生産性向上だ”と騒いだところで、解決には至りません。真の働き方改革とは、「多様な事情を抱えている人が、それぞれの事情で可能な範囲で労働することを不公平と思わないこと」と、意識改革することだと思います。みんなと同じを求める“同調圧力”の呪縛から自由になってはじめて、安倍総理の進める「介護離職ゼロ」が実現できると思います。

■教訓

・SNSは最高のセーフティネットである
・かつての日本おいて、社会の既定路線(終身雇用)から降りることは“敵前逃亡”
・他者への許容度を高めることが介護離職削減のために必要
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運営会社 それから株式会社
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