おんなひとりでインドに行く クーリー村のこどもたち

  2018/2/9
シェア ツイート 送る

こんにちは。株式会社PTA所属、脚本家の静原です。


「ガンジス川でスケキヨ」に引き続き、今回もインド旅紀行を書かせていただきます。


その前に、『ひとりでインド旅行をするときの注意点』を2つ挙げます。

1.人通りの少ない場所は避けて歩く

2201802051802580.png
おんなひとりでインドに行く クーリー村のこどもたち
昼夜関係なくですが、とくに真夜中は控える。夜のガンジス川付近は、違法ドラッグを服用した人がうろついていたり、何が起こるかわかないのだとか。

未知の地。もはやSFの世界。現地の人も寄りつかないと言っていた。

2.リキシャー(人力車)、タクシーに乗る前に宿泊しているホテルに連絡をとりつぐ

2201802051803160.png
おんなひとりでインドに行く クーリー村のこどもたち
いちばん安心なのは、現地で1日観光ガイドを雇うこと。出国前に日本語が通じる大手会社を選び、事前に予約すること。インドの空港に到着するとチャーター車を勧めてくるインド人がいますが、高額な請求をされる確率が非常に高いので断固として断ること。


大事なことは洞察力をつねに働かせ自分の身のまわりを観察し、意識を外側に向けていること。
すると危険察知能力が身につき、ついでに思わぬ発見やできごとに巡りあうこともある。今回書かせてもらうインドの北西にあるクーリー村で体験したお話も、そういった経験のひとつだ。

キャメルサファリ(砂漠一泊ツアー)の出発点

2201802051803380.png
おんなひとりでインドに行く クーリー村のこどもたち
村はタール砂漠と隣接しており、キャメルサファリ(砂漠一泊ツアー)の出発点。ここには店らしきものは一軒もなく、あるのは砂で汚れた小さな家だけ。歩いている人はほとんどいない。寂しげな空気につつまれた村だった。

少年に誘われるがままに家に入らせてもらう

2201802051804010.png
おんなひとりでインドに行く クーリー村のこどもたち
ある家を通り過ぎたとき、たまたま少年が家の中から出てきた。小学2年生ほどだろうか。少年は、「アッ! アッ!」と声をあげ、すばやく家の中へ入っていった。とつぜんのことだったので驚いて立ち止まっていると、ふたたび少年がやってきて、私に手招きをしていた。


少年に誘われるがままに家に入らせてもらうと、4畳半ほどの小部屋に、艶やかなサリーを身にまとった老婆と小さな子供たちが、身をよせあうように座っていた。ジッとこちらを見つめている。小さな家に大所帯。少年は同情をかうために私を招き入れたのだと思う。

少年のあとを追い、村の奥へ進む

2201802051804190.png
おんなひとりでインドに行く クーリー村のこどもたち
少年は通学している学校を案内すると言いだした。少年のあとを追い、村の奥へ進む。少年はときおりこちらを伺う様子でふり向き、愛想笑いをする。チップをせがむための笑顔だ。少年はそれを悟られまいと、無理にでも会話を続けようと必死で、汚れたズボンのポケットから子供用サングラスを取り出し、自慢げに見せびらかしてきた。


「宝物。砂漠から飛んできた砂を目から守ることができるんだ。ほらこのとおり」


プラスチック製の壊れかかったサングラスを顔にかけると、さも誇らしげにしていた。


しばらくすると、学校が見えてきた。遊戯場もプールもない、小さな学校だった。

「どんな学校が日本にはあるの」

2201802051804370.png
おんなひとりでインドに行く クーリー村のこどもたち
「どんな学校が日本にはあるの」と少年が訪ねてきたので、「ここと似たようなものだ」となんとなく嘘をついた。少年は私の嘘を見破っていたのか、私から目線を外し、スタスタと来た道を歩き始めた。

小さな子供でさえ、金のためにはなんでもする

インド各地を観光しているとき、絶えず金の要求をされることが多かった。写真を撮る代わりに金。道を教える代わりに金。少年はあけすけに「金をくれ」と言わないものの、学校案内もやはりチップのためであろう。1円だろうが2円だろうが、小さな子供でさえ、金のためにはなんでもする。少年のうしろ姿を見ていると、切なさがこみ上げてきた。


少年にチップをいくら渡すか考えていると、薄汚い好奇心が芽生えはじめた。もし、少年に大金をさしだしたらどんな反応を見せるのだろうか、泣いてわめいて喜ぶのではないか。といえど、野卑な心と裏腹に、できることはせねばならないという想いもあった。できるだけ金を渡したほうが喜ばれることはたしかだ。


金を与えるだけが『その人のため』ではないことは充分にわかっている。だから、発展途上国に学校が建てられ、学問を教え、働く術を身につける仕組みができている。しかし、私の財力では多くの人を救うことはできない。だから、目の前にいる少年だけでもと思い、日本円で5千円ほど渡した。少年は驚いた様子で金を受けとり、いちもくさんに家のほうへ走っていった。挨拶のひとつもなく、金だけもぎ取られたような気になり、心が曇った。

サングラスごしに見えるクーリー村

翌日、砂漠ツアーから村へ帰ってくると、昨日の少年が建物の陰に隠れ、じっと私を見ていた。


5千円は具体的にどういった使い道になるかわからないが、彼らの大切な生活資金である。娯楽に使う金ではない。インドで目にした貧困に喘ぐ人々は、私たちのように「来年はこうしてああしたい」といった豊かで遠い願望を描かず、目の前にある明日や明後日のことしか見つめていないような気がした。金があると遠い未来へ希望を託すことができるが、金がないと希望の距離が短くなる。近い未来をどう生きるかで胸がいっぱいになって、遠くが見えなくなる。


次の目的地に向かう車に乗りこんだ。ガイドがやってきて、勢いよくエンジンキーを回したときだった。窓ガラスを叩く音がする。昨日の少年だ。窓開けると、「これッ」と言って少年はサングラスをさしだした。ガイドが少年を怒鳴りちらした。表情からして、観光客に近づくな。ということを言っているような気がした。受け取ったサングラスはとても軽かった。もらえないと断ると、少年は首を横にふり、車から身を引いた。けして裕福とはいえない場所で生きる少年の、ぎりぎりの優しさだ。唯一差し出せるものが、宝物のサングラスだけだった。私は自慢げにサングラスをかけて見せると、少年は満足そうな顔で笑っていた。


車は砂ぼこりをあげて走りだした。


サングラスごしに見えるクーリー村はモノトーンに写り、その世界のなかで少年だけがくっきりと浮き彫りになって見えた。少年は私が見えなくなるまで大きく手をふっていた。少年がどのような未来を歩むかわからないが、「彼にとって、幸福と感じることがたくさんあるといい」と願った。


車の窓に、異国の村が遠ざかって行った。

インドを歩くときにはいていたもの

2201802051804560.png
おんなひとりでインドに行く クーリー村のこどもたち
(写真)少年からもらったサングラスとラクダ使いのおじさんがくれたマッチ。
ビーチサンダルは、インドを歩くときにはいていたもの


~これまでの「おんなひとりでインドにいく」シリーズはこちらから~
タール砂漠編
ガンジス川でスケキヨ
2201710302001350.png
写真・文:静原 舞香(株式会社PTA所属、脚本家)
運営会社 それから株式会社
ヒメノワ
会社名 それから株式会社 設立 2017年4月7日 代表取締役 庄司 桃子 (中小企業診断士) 事業内容 会社経営、マーケティング...
プロフィールや他の投稿を見る

シェア ツイート 送る

カテゴリーが一緒のinformation

2201710311503040.png
メールも電話もすべて切り離せ!だって海外だから!日常からは完全に離れた環境で新しい経験をしてみよ...
海外旅行
運営会社 それから株式会社
ヒメノワ
2017/10/31  -  №295

ページTOP