ガンジス川でスケキヨ

  2018/1/5
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みなさん、こんにちは。前回、タール砂漠で野犬に襲われ、お尻を丸出しのまま砂漠を駆け抜けた、フレッシュな青春旅行記を書かせていただきました、株式会社PTA所属、脚本家の静原です。今回はインドの北部に位置するヒンドゥー教の聖地、バラナシ、ガンジス川でのDEEPなお話。

前回の青春旅行記はこちらから

ヒンドゥー教徒の生と死はすべてこの川にある

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ガンジス川でスケキヨ
毎年、100万人以上のヒンドゥー教徒が訪れるガンジス川。


インド人ガイドいわく、「ヒンドゥー教徒の生と死はすべてこの川にある」だそうだ。ここへやってきた信者は現世の罪を洗い流すために沐浴をし、神に祈りを掲げる。また、この世を去った者は川筋にあるマニカルニカー・ガートで焼かれ、灰になったあと、ガンジス川に流され、人生の幕を閉じる。


というのが、皆さんの知っているガンジス川のイメージだと思うが、実際のところは、想像以上にカオスに満ちた川だった。

口車に乗せられてキッチュな牛のキーホルダーを買う日本人

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ガンジス川でスケキヨ
マリファナを買うために観光客を騙すインド人。口車に乗せられてキッチュな牛のキーホルダーを買う日本人。お金をせびるエセ修行僧。しつこさに負けてしぶしぶ小銭を渡してしまう日本人。ガンジス川のほとりで遊びまくるインド人の子供。ガンジス川で犬神家のスケキヨをやる日本人。

私は、「ガンジス川でスケキヨ」をするためにインドへ行った

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ガンジス川でスケキヨ
上記にある日本人、というのは全て私のことある。


私は、「ガンジス川でスケキヨ」をするためにインドへ行った。


『ガンジス河でバタフライ』(たかのてるこ著・幻冬舎文庫出版)を読み、あれよあれよと触発され、すぐさまインド行きを決めた。度胸試し愛好家の私としては、ガンジス川で泳がねば人生の幕を閉じることなどできない。



しかし、ガンジス川でバタフライでは、たかのさんの真似事になってしまう。私なりのオリジナリティが必要だ。ふつふつと考えているうちに、ふと、「川……。いやあれは湖だけど、犬神佐清っちゅうもんが、どえらい死に方をしていたな。スケキヨがやりたい」という願望が湧き出てきた。



犬神佐清とは、横溝正史の小説、『犬神家の一族』に登場する、白いゴム製のマスクをかぶった男。彼は、日本映画界の中でもトップ3に入る有名な男だ。
「ガンジス川でスケキヨ」日本でこのアイデアを実行した奴は絶対いない。誰かにやられる前にやっちまおう。急ぎ足でチケットを予約し、羽ばたくようにインドへ旅立った。


ガンジス川に入った日本人は、かなりの確率で病に悶え苦しむそうだ。


原因は単純明快。


謎めいた病で命を落としたインド人の亡きがら、何を食って死んだかわからない犬。青い生活用水、赤いおしっこ、黄色いうんこが四六時中流れているからだ。科学者もドン引きの病原菌が川の中にびっしりと生息している。


実際に川を眺めてみると、茶色い、オーソドックスな汚い川に見えたが、よく目を凝らしてみると、えげつなかった。ガンジス川はカラフルだ。色彩あざやかなゴミがいたる所に浮いている。茶色だと思っていた土は、緑だった。土の上を白いミミズのようなものがウヨウヨとうごめいている。


とまどいながらも川に足を踏み入れると、グニャリ。という不気味な感触が足の裏を走った。毛穴を通って、何億もの病原菌がからだに侵食していくのがわかった。しかし、用心深い私はワクチン接種済み。向かうところ敵なし。


足の裏を川から引きあげると、ジェル状のぶよぶよとした緑色の土が、私の足の裏をぷっくりとコーティングしていた。


水温は生暖かく、水はやけに柔らかい。ちょいと水を試飲させてもらうと、まろやかであった。日本の最先端水浄化システムを利用すれば、ガンジス川の水は飲めるのではないか。


歩くにつれ、水深がどんどん深くなっていく。遠藤周作の小説に、『深い河』があるが、遠藤周作はガンジス川の中へ入ったのだろうか。もし、遠藤周作が生きていたなら、「深い川だった」と伝えたい。


肩までつかったところで両手を合わせて合唱。神に祈りを掲げたあと、ようやく、「ガンジス川でスケキヨ」に挑んだ。難なくこなせると思っていたが、意外とむずかしかった。

「ガンジス川でスケキヨ」テイク1

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ガンジス川でスケキヨ
勢いよく顔を沈めども、衣類が空気を含み、ぷかぷかと浮いてきてしまう。

「ガンジス川でスケキヨ」テイク2

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ガンジス川でスケキヨ
さらに気合を入れて水中へダイブ。


バランス感覚がなければこの通り。ぶざまなポージングになってしまう。

「ガンジス川でスケキヨ」テイク3

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ガンジス川でスケキヨ
完全に頭から足首までガンジス川に沈め、川底の土を掴んで逆立ち。


ようやく、「ガンジス川でスケキヨ」の完成。


約30秒ほどガンジス川の中に顔を沈めていたが、ワクチン接種の甲斐あってか、病原菌に感染することなくインドの旅を終えた。

私は長野県大町市青木湖に

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ガンジス川でスケキヨ
インドから帰国して1週間後。私は長野県大町市青木湖にいた。


映画『犬神家の一族』のロケ地、犬神佐清の遺体が見つかった場所を見るためである。以下が、佐清の足が二本、ニョキッと出ていた場所。


ガンジス川にくらべて、えらい綺麗ではないか。写真撮影をしようとカバンに手をつっこむと、何かが手に当たった。取り出してみると、ガンジス川のほとりで無理矢理買わされた、なんともお粗末な牛のキーホルダーだった。


こんなものに、日本円1800円も使ってしまった。長野で食う蕎麦より高いではないか。旅路の記憶をうつらうつらと思い出してみると、よくよく考えれば、「青木湖でスケキヨ」でよかったのではないか。そもそも、インドに行く資金、ワクチン接種代を考えると、いったいいくら使ったのか。


東京に着いて、土産の『ガンジス川の水入りミニ壷キーホルダー』のフタを開けてみると、水ではなく、土が入っていた。


やはり、インドは想像を超えた国だ。国というより、一つの惑星かもしれない。

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写真・文:静原舞香

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